義政(単行本)

    義政 (Yoshimasa) by 九島伸一 (Shinichi Kushima) 発行:幻冬舎メディアコンサルティング 発売:幻冬舎 ISBN:978-4-344-91524-4 C0093 ¥1300E 本体1,300円+税       「無能な将軍」でもなく「日本文化の始祖」でもない 室町幕府八代将軍の知られざる「こころ」の内 東山山荘に招いた9人の客との「対話」をとおして浮かびあがる彼の「思い」とは 美を追求することで義政が実現したかった世界とは 主 足利義政(再生) 客 伊勢貞宗(礼法)   観世信光(猿楽)   横川景三(禅那)   村田珠光(点茶)   日野富子(家守)   立阿弥 (立花)   足利義視(避難)   小四郎 (作庭)   大内政弘(統治)   『義政』はオンラインで買うこともできます。 アマゾン MARUZEN・ジュンク堂書店・honto 紀伊國屋書店 はじめに  足利義政のことを書いた文章は多いが、義政の描き方はどれもよく似ている。「将軍として無能だった」「事跡には見るべきものがない」「私生活は無惨だった」というような説明はどれも同じ。そして、どの文章も「だが」と続く。「だが、あの素晴らしい東山文化を築いた」「だが、すべての日本人に永遠の遺産を残した」「だが、彼の心性こそが今の日本人の直接の祖である」という具合だ。  この「文化以外のすべてにおいて最低」「文化のことについては最高」という義政についての定着してしまった評価に、私は違和感を抱いた。一方で応仁の乱を招いた無能な将軍と貶おとしめ、また一方で日本文化の美しさの始祖のように持ち上げる。私は直観で、貶めるのも持ち上げるのもなにか違うと感じた。義政は多くの失敗と挫折を経て、懐の深い優しい人間になっていたはずだからだ。  文明十五年(一四八三年)、すべてから自由になった義政は、まだ常つねのごしょ御所しかできていない東山山荘に移り住んだ。その義政に九人の客を迎えさせ、話をさせる。そうすることで、義政が「最低」でも「最高」でもなかったことが、わかってもらえるかもしれない。なにもかもがうまくいったのっぺりとした人ではなく、なにもうまくいかなかった深みのある人が描ければいい。そう思ってこの本を書き始めている。  九人の客のなかには、別居中の妻富子がいる。離れて住むようになってからのほうが、仲が良かったという。飛騨にいるはずの弟の義視も客となる。もっとも、義視がこの頃に東山山荘を訪れたという記録はない。応仁の乱で西軍についた大おおうちまさひろ内政弘もまた、義政に会いに来る。非公式な記録によれば、二人の会談は数回に及んだという。そして、河原者の庭師小こしろう四郎までもが招かれる。義政にとっては管領も河原者も同じ。誰を客として招いても不思議はないのだ。  義政は将軍だった。しかも時は十五世紀。現代とは食べるものが違い、飲むものが違い、着るものや履くものも違った。言葉が違い、好きなものが違い、考え方や価値観はまったく違った。義政が見ていた景色は、私たちが見ている景色とは大きく違う。男と女の関係にいたっては、私たちには理解不能。努力してもわからない。義政の歌を声に出して味わってみたところで、わからないものはわからないのだ。  義政は教養人だと言われる。好奇心が強く、なかなかの戦略家だったという人もいる、でも、そんなことはどうでもいい。人のことを思うことができるかどうか。人として素晴らしいかどうか。深みがあるかどうか。そんなことのほうが大事ではないか。  本書に収められることになる九回の対談はすべて、文明十五年に行われた。その時義政は四十八歳。思い通りにならない日々に別れを告げ、はじめて自由を味わっている。そのなかでの九人の客との対談からは、高揚した感じが伝わってくるはずだ。  なんといっても、遠い昔のこと。当時の人の気持ちなど理解しようがないし、なにを書いても嘘になる。だから義政と客には、私の思惑などとは関係なく、自由に話をしてもらう。なにを話すのか、楽しみではある。 (Google Translate)___________________________________ Preface There are many sentences written about Yoshimasa Ashikaga, but the ways to describe Yoshimasa are similar. All the explanations such as “He was incompetent as a general”, “There was nothing special in his governance”, “His life was miserable”, are all the same. And, the sentences continue with “But”. “But he built the wonderful Higashiyama culture”, “But he left an eternal legacy to … Continue reading 義政(単行本)